池袋シネマ・ロサで好評上映中の企画「新人監督特集Vol.3」の第二弾作品『モラトリアム 完全版』が5月18日(土)から5月24日(金)まで上映されている。
5年前に撮影されたという本作は、日常の出会いの中で、若い主人公の心の中が少しずつ変化していくさまを描いた物語で、澤佳一郎監督自身によるオリジナル脚本。「新人監督特集vol.3」の初日舞台挨拶のMCを務める女優・里内伽奈によると、詩的でとても美しい言葉が並んだ脚本だったという。本記事では、5月18日に行われた上映初日舞台挨拶レポートを交えながら本作の魅力を紹介する。

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映画『モラトリアム 完全版』は、澤佳一郎監督初の長編フィクション映画。澤監督は、2010年、映画美学校ドキュメンタリー科修了。諏訪敦彦監督、筒井武文監督に師事し、修了制作『そこにあるもの』を完成させ、翌年の「映画美学校セレクション」に選出。2019年劇場公開を控えている。他、ドキュメンタリー作品として、テルミン奏者の竹内正美氏を追った『ニ・ムリョート』を制作した経歴をもつ。
主演の品田誠は、池袋シネマ・ロサの特別企画「the face vol.1」で特集された注目の俳優。メインキャストの吉原三樹役を演じた尾身美苗は、映画『この世界の片隅に』で主人公すずの叔母・黒村径子役を演じた尾身美詞の妹。

解説:映画『モラトリアム 完全版』

※モラトリアム=猶予期間

イントロダクション(公式サイトより引用)
誰かと関わること、その全てに意味があり、また意味はないのかもしれません。
けれど小さく変化していく、その日常に自分をさりげなくのせて前に進んでいく、そんな若者たちが映っています。
他者との作用で自分への問いかけに変化が生まれてくる。
この作品が流れている時間、それが自身を眺めている時間になればいいなと思っております。
答えではなく何かの気付きが生まれますように。

物語
人と関わることが苦手な大学生の吉原は公園でピエロのパフォーマンスを見るのが日課だった。
だがピエロは突然、公園に現れなくなる。
そこに葛城という青年が現れ「ピエロになりたいんじゃない?」と問いかけられる。
なぜピエロに固執しているのか分からないまま、吉原は葛城と日々を過ごしていく。
池袋シネマ・ロサの特別企画「the face vol.1」で特集された品田誠が葛城を。ダンサーである尾身美苗が吉原を演じる。

舞台挨拶レポート

モラトリアム
ピエロ、右代谷勝好、鈴木亜莉沙、大石知恵、澤佳一郎監督、田中一平、尾身美苗、品田誠

5月18日に行われた、初日舞台挨拶の登壇者は、品田誠、尾身美苗、大石知恵、右代谷勝好、田中一平、鈴木亜莉沙、澤佳一郎監督。そして、MCを女優・里内伽奈が務めた。なお、上映初日の来場特典として、入場者全員へパンフレットが無料進呈された。

監督の脚本と演出について

MCの里内さんから、映画のメインとなる公園やピエロの発想について質問された澤監督は、
「公園はもともと好きだったり、家にひきこもりがちだった生活の中、外に出て落ち着く場所が公園だった。」「公園にいるといろんな人がいたり、想像ができる空間・場所なので、自然にそこにあるロケーション場所だった」と語った。

モラトリアム
品田誠、澤佳一郎監督、【MC】里内伽奈

ピエロが登場することに関しては、もともと、知人から舞台演劇用に依頼された脚本の中に大道芸をしている人物がでてくるものがあり、そのスピンオフとして書いたことに端を発しているという。

撮影の思い出

冬に撮影した夏のシーンが・・・

撮影期間は、夏と冬に撮る予定をしており、4月から10月にかけて撮影をしたが、夏のシーンを撮り忘れ、1月・2月くらいに半袖で夏のシーンを撮影したという。
品田さんから、その夏のシーンがどこだったのかを聞かれた澤監督は、実は本編ではカットしていたことを明かし、その事実にキャストと観客の一同がどよめいた。

モラトリアム
大石知恵、尾身美苗、品田誠、澤佳一郎監督

普段はダンサーである尾身さんは、澤監督から「ダンスを撮りたい」「セリフはあまりないから」ということで出演依頼があったはずなのに、実際はとても長いセリフや長回しのシーンがあり、澤監督にダマされたと、当時を振り返った。

モラトリアム
大石知恵、尾身美苗、品田誠

季節をまたぎ、半年間におよんだ撮影での苦労

撮影での苦労について質問された品田さんは、半年後に再開した撮影で、当初、どんな役作りをしたかを思い出すのに苦労したことをエピソードとして挙げた。
また、尾身さんは衣装やアクセサリーがほとんど私物だったので、半年後にその衣装がなくなっていたり、探すのに苦労したことを明かした。

作品内で、カップル役を務めた田中一平さんと鈴木亜莉沙さんからは、「ほんの少しの出演であったが、今回、舞台挨拶によんでくれて、名前を呼んでくれたことに感謝している(鈴木)」「5年前に撮影し、5年経ってこうやって上映されることに映画の醍醐味を感じ、とてもうれしい(田中)」と、監督やキャスト、そして観客のみなさんへの感謝の気持ち述べた。
それを受けて、澤監督からも「5年間、繋がってくれてありがとう。」という言葉があった。

モラトリアム
カップル役のふたり(中央)鈴木亜莉沙、田中一平

澤佳一郎監督作品上映情報

映画『モラトリアム 完全版』
シネマスコーレ(名古屋) 6月22日~

映画『そこにあるもの』
池袋シネマ・ロサ 2019年秋上映予定

映画『モラトリアム 完全版』

出演者:
品田 誠(Makoto Shinada)–葛城 正太郎役–
尾身 美苗(Minae Omi)–吉原 三樹役–
長通 悠陽(Yuya Nagamichi)–谷 直子役–
大石 知恵(Chie Oishi)–橘 晴子役–

ナカガワ アキ(Aki Nakagawa) –長谷 順子(長谷 智哉の妹)役–
上村 志乃(Shino Kamimura) –石川 朱里役–

右代谷 好勝(Yoshikatsu Ushiroya)–長谷 智哉 (長谷順子の兄)役–

田中 一平(Ippei Tanaka)–カップルの男役–
鈴木 亜莉沙(Arisa Suzuki)–カップルの女役–

スタッフ:
脚本・編集・監督 澤佳一郎
撮影 澤佳一郎
角田法和
吉田岳男
録音 大石知恵
比嘉憲吾
美術 伊藤和代
山塚早希子
配給協力 永野貴将
宣伝協力 泊昌史

音楽 haruka nakamura
itoshigeo
白根一成
大石知恵

制作 reclusive factory(りくるーしぶ ふぁくとりー)
(C)2016 reclusivefactory

公式サイト: https://www.reclusivefactory.com/

 

[取材・写真:Ichigen Kaneda/記事構成:Jun Sakurakoji]