SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬
立川直樹 / 鋤田正義

“SUKITA”こと、写真家・鋤田正義、80歳。世界的アーティストたちの最高の一瞬を捉えた日本人写真家として知られる彼のことを、デヴィッド・ボウイは「素晴らしいアーティスト」、イギー・ポップは「すべての写真家の中で最も信頼している。」と言わしめる。忌野清志郎、YMO、そして現在も、SUGIZO写真展が開催されなお進化し続ける。
そんな彼のドキュメンタリー映画『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』が5月19日より全国ロードショー。鋤田氏本人登壇の初日舞台挨拶のもようをお届けする。(動画&フォト)

世界的アーティストたちの 最高の一瞬を捉えた日本人写真家

2016年1月にこの世を去ったデヴィッド・ボウイをはじめ、イギー・ポップ、マーク・ボランら世界的アーティストの代表的なポートレートやアルバムジャケットを数多く手掛けてきた日本人写真家がいる──。
鋤田正義、この5月で80歳。半世紀以上も第一線で活躍してきた彼は、今も尚、走り続けている。
1972年に運命的に出会ったデヴィッド・ボウイと40年以上も親交を結び、マーク・ボランを撮った1枚は、ギタリストの布袋寅泰の人生を決定づけた。一体どのようにして鋤田はアーティストたちと信頼関係を築き、唯一無二の“一瞬”を写真に刻むことができたのか? 鋤田の写真の魅力と秘密に迫る初のドキュメンタリーが誕生した。

SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬

SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬
イギー・ポップ / 鋤田正義 / デヴィッド・ボウイ

映画『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』

5月19日(土)より新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国ロードショー!
配給:パラダイス・カフェ フィルムズ
(c)2018「SUKITA」パートナーズ

イントロダクション

デヴィッド・ボウイ、マーク・ボラン、YMO、忌野清志郎、寺山修司……
時代を駆け抜けた天才たちの《永遠の時》を獲得した
写真家・鋤田正義の軌跡をたどるドキュメンタリー!

SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬

主な出演者

布袋寅泰(ギタリスト)
細野晴臣(ミュージシャン)
坂本龍一(ミュージシャン)
高橋幸宏(ミュージシャン)
MIYAVI(ミュージシャン)
PANTA(ミュージシャン)
是枝裕和(映画監督)
他多数

SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬
坂本龍一 / 鋤田正義
SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬
布袋寅泰 / 鋤田正義

SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬

初日舞台挨拶トークショー

場所:新宿武蔵野館
聞き手:立川直樹氏

この日は朝早くから劇場前に舞台挨拶を待つ観客の行列ができたという。
それに対して、鋤田正義氏は深い感謝の意を述べ、音楽会の巨匠とも言える方とは思えない腰の低さが印象的だった。
それは、鋤田氏の撮影スタイルからも来ているのかもしれない。
トークショーで鋤田氏は、「ポートレート撮影は、モデルとカメラマンの立場はフィフティ・フィフティと考えていて、僕が巨匠と呼ばれるようになると、(モデルが身構えてしまって)それがやりにくくなる」と語っていたからだ。

SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬

自分で自分のドキュメンタリーを見た感想

– 自分の人生が凝縮されているこの映画を最初に観た時の感想はいかがですか?

鋤田正義
1回だけ観たんですけど、半分覚えてないですね。
なんか恥ずかしいんですよ。
いつも撮る方に回ってるんで、撮られるっていうのはどうも落ち着かないというか、もうちょっと時間が経たないとわかんないんじゃないかなと思っています。

– 映画に登場して鋤田さんのことを語るミュージシャンやプロデューサーの方々は、ほんとに鋤田さんのファンであり、鋤田さんの写真家としての魅力を語っていくんですけど、それは自分で観てて照れくさいとかありますか?

鋤田正義
照れくさいですね。
でも、5月5日で80歳なんですが、その直後から全国的に上映開始になって満足もしています。

まるで“映画”のような写真

鋤田正義
ところで、僕は、福岡県直方市で生まれ育ったんですが、そこで「ただいま。」という写真展をやるってことで先週まで帰ってました。

– お客さんがすごく入ったとか?

鋤田正義
入りましたね。人口5万人くらいの小さな町なんですけど、(来場者が)1万人超えてるみたいだから、5人に1人は観てくれてるんだと思います。
回顧展というのもあって、もう最後だから全部出そうということになって、320~330点くらい。すごいボリュームになって。

– 鋤田さんのことについて、やっぱり、基本的にはミュージシャンを撮ってるだけって思ってる人が多かったりするけど、風景写真も撮ってますし、人物写真も含めて全部映画みたいなんですよね。

人を撮る時は、フィフティ・フィフティ

鋤田正義
僕の信念としては、ポートレート、人を撮る時は、フィフティ・フィフティというか、同じ目線で。
上から目線も嫌だし、下から目線も嫌だし、そのように自分では思ってますから、こういう映画になったらもうポートレートは撮れないかなぁとか思って。だんだん、巨匠とか言われるでしょ(笑)たぶん(笑)
僕はあんまり有名になりたくないっていう気持ちも一方ではあって、でも写真を発表して、多くの人にデヴィッド・ボウイの写真でも観てもらって、外国でも写真展を数多くやってきましたけど、だんだんポートレート撮りにくくなって、これからはちょっと風景写真とかスナップの方に。今は。

– 相手が鋤田さんに撮られているって意識しすぎるようになっちゃうっていう。

鋤田正義
そうですね。
そうなると自分のやり取りって、セッションっていうか、ちょっと違ってくるかなぁと。

– 鋤田さんが写真撮る時は、例えば昔の話ですが、YMOを撮るところを見ても、いい意味で影のようにフーっと来て、気がつくと撮っていなくなってるっていう。
だから、さぁ撮るぞって感じがなかったけども、最近は周りが、鋤田が来るぞって思っちゃうわけでしょ?

鋤田正義
そう。ちょっとポートレートをやりにくくなるっていうマイナス面もありますね。

– でもやりにくくなると言っても、例えばイギー・ポップのように、すごく人を選ぶというかクセの強い人を撮らすと、やっぱり、(鋤田さんは)スゴイっすよね。

鋤田正義
イギー・ポップの撮影は、1回目は1977年にボウイと一緒に来た時。
そこでボウイの『ヒーローズ』のジャケット写真が生まれたりしたんですけど、その時に、ボウイの後にイギー・ポップを撮ったんですよ。
でもその前のボウイの表情が圧倒的で。そのせいでイギー・ポップが戸惑ってる感があったせいで、あまりチョイスできる写真が少なかったですね。それだけボウイが圧倒的でした。
その後、ソウルで2回目の撮影チャンスがあったんですが、その時はイギー・ポップも思いっきりやりだして、表情がすごいいいのがいっぱい撮れました。

SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬

ミュージシャンを“産み出す”写真の力

– 今度、6月9日から京都で、「ROCK:POWER,SPIRIT&LOVE」っていうロックの何にインスパイヤされたかっていうちょっと変わった展覧会を開催するので、先日、布袋くんに「ロックの最初の衝動」というテーマでと話をして聞いたんです。
彼によると、群馬の楽器屋に子供の頃に行った時に、鋤田さんが撮った例のマーク・ボランのモノクロの写真が貼ってあったのを見て、「『なんてこの人は恍惚な表情をしているんだろう』って、十代の僕が思ったんですよ。で、その写真の下に目線を下げると、ギターがあったんで、僕はギターをやることになりました。」って。
すなわち、“ロック=ギター”で、それは鋤田さんが出会わせてくれたんだって。多いんだよねそういう人って。

鋤田正義
その話、僕も彼(布袋寅泰)と対談した時に初めて聞いて、ちょっとビックリしました。嬉しかったですね。
自分の写真が役立って。若い優秀なミュージシャンがどんどん出てくるっていうのは、いいことしたかなぁって思いました。

– こないだRED WARRIORSのSHÄKE(木暮武彦)と会ったら、「鋤田さんは写真家じゃなくてロックミュージシャンですよ」って言ってましたよ。スピリットの持って行き方がそうだっていう意味で。
ボブ・グルーエン(これまた伝説のロック写真家。関連記事)がそういうところあるじゃないですか。
そういう意味では日本でミュージシャンを撮ってる写真家はけっこういるけど、お世辞じゃなくて、今回の映画を見て、鋤田さんってそういうことだったんだよなって思いましたね。

鋤田正義
福岡の写真展で、シーナ&ザ・ロケッツの鮎川誠さんと対談した時、彼に言われました。「写真撮られるんだったら、鋤田さんかボブ・グルーエンだ」って。

80歳バースデープレゼント

2018年5月5日で80歳を迎えられた鋤田正義さんに、サプライズプレゼントとして、直径30cmのドラヤキが贈られた。
甘い物が好きだという鋤田さんはそれを見て「(故郷の)福岡県直方市の名物“成金饅頭”みたい。すごいですね。」とお客さんにも「ほら、こんなの!」と満面の笑みで見せていた。
その後、最後のメッセージを求められると、帽子を脱ぎ、頭を下げながら、次のように集まった満員の観客に感謝の言葉を述べた。

SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬

鋤田正義
今日は朝早くから来ていただいて、ほんと、感謝します。どうもありがとうございました。

舞台挨拶動画

映画予告編

鋤田正義 バイオグラフィー

1938年 福岡県直方市に生まれる。
1954年 直方高校入学。
1956年 母親に買ってもらったリコーフレックスで母親のポートレートを撮る。
1958年 日本写真専門学校入学。
1960年 日本写真専門学校卒業、棚橋紫水に師事。
1961年 大広に入社。
1965年 上京、原宿のセントラルアパートにあるデルタモンドに入社。
1968年 『FLOWER』で第8回APA展会長賞受賞。
1970年 フリーランスとして独立。寺山修司の『毛皮のマリー』のニューヨーク公演を撮影、後に『ラ・ママ』として発表。 メンズファッションブランド『JAZZ』のポスターでADC賞銅賞受賞。
1971年 寺山修司監督作品『書を捨てよ町へ出よう』ムービー撮影。
1972年 T・レックス を撮りにロンドンへ。デヴィッド・ボウイにも直接会って交渉し、撮影をする。
1973年  2月、NYにてボウイツアー、撮影。4月、デヴィッド・ボウイ初来日。ツアーに同行して撮影。
1974年 サディスティック・ミカ・バンドのアルバム『黒船』のジャケット撮影。
1977年 東京にてプロモ来日中のデヴィッド・ボウイ、イギー・ポップを撮影。
1979年 YMOのアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』のジャケット撮影。
1980年 デヴィッド・ボウイ来日。東京、京都で撮影。
1988年 ジム・ジャームッシュ監督作品『ミステリー・トレイン』スチル撮影。
1992年 デヴィッド・ボウイ写真集『氣』発売。忌野清志郎『Memphis』ジャケット撮影。
1999年 是枝裕和監督作品『ワンダフルライフ』スチル撮影。
写真展『T.REX』開催、写真集『T.REX』発売。
2002年 写真展『マーク・ボラン&T.REX』(ロンドン)参加。
2009年 ニューヨーク滞在中にデヴィッド・ボウイと最後になるフォトセッション。
2010年 YMO 写真集『Yellow Magic Orchestra × SUKITA』発売。
2012年 イギリスのジェネシス出版よりデヴィッド・ボウイとの共著となる写真集『Speed of Life 生命の速度』発売。集英社より写真集『SOUL 忌野清志郎』発売。
東京都写真美術館にて『鋤田正義展 SOUND & VISION』、パルコミュージアム(渋谷パルコ)にて『鋤田正義写真展 きれい』、ポール・スミス・スペースギャラリーにて『David Bowie 写真展“Speed of Life”』開催。
2013年 ロンドン・ヴィクトリア&アルバートミュージアム主催のデヴィッド・ボウイ大回顧展『DAVID BOWIE is』参加。同時期にロンドン・Snap Galleriesにてデヴィッド・ボウイ展開催。 8月、韓国にてイギー・ポップ撮影。
2015年 ワールドツアーの一環として、フランス・パリ、イタリア・ボローニャ、オーストラリア・メルボルン、そして11月にはアメリカ初となる、ニューヨーク(Morrison Hotel Gallery)でのボウイ展を開催する。7月、箱根・彫刻の森美術館にて『鋤田正義写真展Flash Back !』開催。
2016年 1月、品川キヤノンギャラリーSにて鋤田正義写真展『SUKITA/M BLOWS UP David Bowie & Iggy Pop』を開催。4月、ポール・スミス・スペースギャラリーにて開催の『Paul Smith + Masayoshi Sukita for David Bowie 2016』へ参加、同月にイタリアのラ・スペツィアにあるFondazione Carispeziaに於いて『David Bowie & Masayoshi Sukita: Heroes』を、翌月からは金沢のしいのき迎賓館と北國新聞赤羽ホールで『鋤田正義展 SOUND & VISION 2』をそれぞれ開催。MIYAVI撮影。ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールにてイギー・ポップ、NYにて坂本龍一撮影。

[写真・動画・記事:Jun.S]