各劇場で満席回が続出している映画『火口のふたり』。9月7日(土)に、本作の脚本・監督にして「映画芸術」編集長を務める荒井晴彦と、「映画秘宝」編集長の岩田和明が登壇した大ヒット記念トークイベントを実施。発売中の「映画秘宝」で実現した初の編集長対談に続いて、台本なしの完全ガチンコトークを繰り広げた。

『火口のふたり』大ヒット記念!映芸VS秘宝 編集長対談トークイベントレポ

◆日程::9月7日(土)
◆場所:新宿武蔵野館
◆登壇者(敬称略):荒井晴彦(脚本・監督、映画芸術 編集長)、岩田和明(映画秘宝編集長)

火口のふたり
岩田和明(映画秘宝編集長)/荒井晴彦(脚本・監督、映画芸術 編集長)

土曜日の夜に、映画ファンに埋め尽くされて満席の劇場のアツい拍手に迎えられ荒井と岩田が登壇。
各地の劇場で満席が続出し、トークイベントの前の上映回も満席となった本作だが、「まずは荒井監督、大ヒット本当におめでとうございます!」と岩田から本作の大ヒットを祝う言葉に、荒井は「本当にそうなの? 大ヒットしているんですか?」と自作のヒットへ自ら疑いの言葉を投げ、会場を沸かす。
「公開から2週間を経てなお満席な今日の客席がヒットを証明しています! あまりヒットの実感はないですか?」と言う岩田へ、「わからないなぁ。ほとんど経験ないからね。ヒットする映画にはろくな映画がないから」と皮肉交じりに応える荒井が再び笑いを誘い、トークイベントがスタート。

荒井が編集長を務める「映画芸術」は今年編集長就任30周年を迎えたことを受け、岩田は「今年は『映画芸術』荒井晴彦編集長30周年イヤーでもありますね。大ヒットと合わせてダブルでおめでとうございます!」と再び讃辞を送るも、荒井は「いやいや、でもショックなことがあってさ。国立映画アーカイブで“映画雑誌の密かな楽しみ”って展示をやってるけど、チラシに『映画秘宝』は載ってて、『映画芸術』が載ってないんだよ。」とチクリ。
岩田は「えっ、載ってないんですか? 知らなかったです。」と驚くも、荒井は「またまたぁ、知ってるくせに。その勝ち誇ったような顔~!」と嫌そうに返し、ふたたび荒井節をお見舞い。
岩田が「いや、本当に知らなかったんですよ。それは由々しき事態ですね、国立映画アーカイブに抗議したほうがいいんじゃないですか?」と返すと、荒井は「おかしい展示だよ。ドン・キホーテみたいな『映画秘宝』が載っていて、折り目正しい『映画芸術』が載ってないなんて。」と、『映画秘宝』を刺しつつ展示への文句を発する始末。場内は爆笑に包まれ、場の空気が温まる。

火口のふたり

話題は本作のヒットの秘訣に移り、荒井はヒットした勝因を問われるも「全然わかりません。」と渋い回答を示すも、岩田は「セックスシーンに清潔感があったことが勝因のひとつじゃないかと思います。ねっとりとした“汗の作家”である荒井晴彦映画を期待して観に行ったら、汗がほとんど映らない。清涼飲料水のようにすがすがしい、上品で明るいセックスシーンばかりだから、女性客も観に来やすい。いっぽう男から観ると『火口のふたり』のような腹八分目の脂っこさのセックスシーンのほうが、女性客や荒井映画の初心者にとってはちょうどいい塩梅なんじゃないかと。カラッと明るく楽しいセックスと、主人公ふたりの爽やかで屈託のない多幸感が、結果ウェルメイドな娯楽映画の気持ち良さになって、女性客もたくさん観に来て、ヒットに繋がったんじゃないかと思いました。」と、濃厚な荒井映画のイメージに反して爽やかな鑑賞後感を観客に与える点がヒットの要因ではないかと分析。
実際、鑑賞した感想からは“セックスを扱っているのに爽やか”“エロティックさよりも明るさや可笑しみが勝る”など、荒井が「役者のふたりの若さが生み出したもの」と語る、本作の清涼感や明るさを評価する向きが、日に日に多くなってきている。

また、『映画秘宝』10月号の編集長対談の裏話について、岩田が「最初に上がった原稿が1万字だったんですが、僕がチェックして、その後荒井さんがチェックした結果、1万2千字に増えました。編集長ふたりで2千字も増やしてしまった(笑)。原稿を書いたモルモット吉田さんは、元が第一稿、岩田さんの直し入りが第二稿、荒井監督の直し入りで決定稿だと言っていました(笑)」。
それに対して、荒井は「俺も直すし、そっちも直すし、なかなかいいコンビだよ。つい乗せられてサービスしたくなるんだよ。余計なことを付け加えてね。」と返すと、岩田が「書き手がサービス精神から原稿をどんどん足して面白くしていく。荒井さんがやったそれこそが、まさに映画秘宝イズムですよ(笑)」と応酬。

終盤には観客からの質問も挙がり、“映画で伝えたかったメッセージをひとことで表すとどんな言葉か?”という問いに、荒井は「んー“こんな国滅びてしまえばいい。”ということかな。」と、劇中で描かれるある終末的な出来事に対して痛烈なブラックジョークをかますと、岩田が「国立映画アーカイブのチラシに『映画芸術』がない理由が今よくわかりました(笑)」と返して、再び場内の爆笑をかっさらった。

さらに、荒井が触れた劇中の終末的な出来事に対して、岩田は「ラース・フォン・トリアーの映画のように、世界も終末に向かっていて、主人公も同じように暗く鬱屈としていたら、そんな苦行は観たくないと思うのですが、この映画の主人公ふたりは、世界が終末に向かっていても、決して死を恐れていないどころか、あっけらかんと明るく前向きに世界の終わりと向き合っている。地球が滅亡しようと私たちは関係ねぇぞ! 死ぬまでヤリ続けるぞ! と決意するふたりのポジティヴな気の持ちようが、観ていてまさに“とっても気持いい”。暗い社会情勢だからこそ、主人公ふたりの前向きなエネルギーが観客に生きる活力を与えた結果、ヒットに繋がったんだなと改めて思いました。」と本作への太鼓判を再び押して、終始笑いに包まれた、明るく多幸感に満ちた雰囲気のまま本イベントは終了した。

『火口のふたり』は、新宿武蔵野館ほかにて大ヒット全国公開中。

映画『火口のふたり』

【イントロダクション】
直木賞作家・白石一文 初の映画化
身体の言い分に身を委ねる、男と女を描く<R18>衝撃作
原作は直木賞作家・白石一文氏による「火口のふたり」。二〇〇九年「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」で山本周五郎賞、一〇年「ほかならぬ人へ」で直木賞を受賞し、絶大な支持を得る著者の初の映画化となる。主演を務めたのは、『きみの鳥はうたえる』などなど、様々な映画で鮮烈な印象を残し第一線で活躍し続ける実力派俳優・柄本佑と、『彼女の人生は間違いじゃない』での演技が評価され、活躍の場を広げている新鋭・瀧内公美。出演者はこの2人のみ。監督はキネマ旬報脚本賞に5度輝き、数々の作品で男と女のエロティシズムを表現してきた脚本家・荒井晴彦。抑えきれない衝動の深みにはまり、どうしても離れられないふたりの姿は「世界が終わるとき、誰と何をして過ごすか?」という究極の問いを、観る者へ突きつける。身体の言い分に身を委ねる男と女の不確実な愛を描いた<R18>衝撃作が誕生した。

【物語】
十日後に結婚式を控えた直子は、故郷の秋田に帰省した昔の恋人・賢治と久しぶりの再会を果たす。
新しい生活のため片づけていた荷物の中から直子が取り出した1冊のアルバム。
そこには一糸纏わぬふたりの姿が、モノクロームの写真に映し出されていた。蘇ってくるのは、ただ欲望のままに生きていた青春の日々。
「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」
直子の婚約者が戻るまでの五日間。身体に刻まれた快楽の記憶と葛藤の果てに、ふたりが辿り着いた先は―。
出演:柄本 佑 瀧内公美 原作:白石一文「火口のふたり」(河出文庫刊)
脚本・監督:荒井晴彦 音楽:下田逸郎 製作:瀬井哲也 小西啓介 梅川治男 エグゼクティブプロデューサー:岡本東郎 森重 晃 プロデューサー:田辺隆史 行実 良
写真:野村佐紀子 絵:蜷川みほ タイトル:町口覚  配給:ファントム・フィルム  レイティング:R18+
公式HP:http://kakounofutari-movie.jp/

新宿武蔵野館ほかにて、大ヒット公開中