映画『凪待ち』

4月23日、都内にて、白石和彌監督×香取慎吾主演映画『凪待ち』の完成報告記者会見が行われ、香取慎吾、恒松祐里、吉澤健、リリー・フランキー、白石監督、赤城プロデューサーが登壇した。記者会見全文を一部解説付きでお伝えする。『凪待ち』は2019年6月全国ロードショー予定。(会見フォトギャラリー)

物語は、石巻市を舞台に、人生どん底まで墜ちきった男の狂気、怒りと裏切り、不条理と悲劇を描く。
主人公・郁男という、“墜ちる所まで堕ちきった男”を演じた香取慎吾の演技は鬼気迫るものがあり、観ているものは香取慎吾ということを忘れてしまうほど、作品にのめり込んでしまうだろう。

そんな香取慎吾と初タッグを組んだ白石監督は「これまで経験がない衝撃的な俳優だ」と評している。
それは、香取慎吾という役者は、事前に役作りをしないタイプにもかかわらず、撮影現場ですぐにその役と一体化することができ、また、現場の監督の判断で台本とは違う内容に変更されても、すぐに対応できるという。さらに、香取慎吾という“役者”は自分がカメラにどう写っているか?を瞬時に俯瞰的に捉えることができ、最適な動きができること(詳細は、当サイトの白石監督単独インタビュー記事で後日紹介予定)。
本日の記者会見でも、リリー・フランキーが奇しくも同じ評価を24年前にすでに感じていたことを明かしている(この後の会見文参照)。

「新しい地図」という世界に踏み出した香取慎吾が、これまで表現したくてもその機会がなかなか無かった“新しい香取慎吾の境地”を『凪待ち』という作品を通して、観るものに感じさせてくれるのではないだろうか。
彼自身、「誰もが持っている“自分の中の狂気・闇”が本作で描き出されている。それが今、このタイミングなのはありがたい。」と本日の会見で語っていた。

香取慎吾 - 映画『凪待ち』

完成報告記者会見全文

映画『凪待ち』

“心の救済”を描いた映画

香取慎吾(木野本郁男役)
映画『凪待ち』完成しまして、6月公開されることになりました。すごく嬉しく思っています。一人でも多くの方に観てほしい映画です。

映画『凪待ち』
香取慎吾

恒松祐里(星野美波役 郁男の恋人・亜弓の娘)
私が十代最後に撮った映画です。技術が足りなかった部分もあったかもしれないですが、ここにいる皆さん含め、キャストの方々、スタッフの皆さんに支えていただいて、頑張って演じた作品です。
たくさんの方に観ていただけたらと思います。

映画『凪待ち』
恒松祐里

吉澤健(昆野勝美役 美波の祖父)
試写の時に一緒に観た私の友人が、「久しぶりにまた観たい映画を観た」と言ってました。この作品はそのような映画になっていると思います。

映画『凪待ち』
吉澤健

リリー・フランキー(小野寺司役)
白石監督がまた素晴らしい映画を作られまして、ほんとにたくさんの方に観ていただきたい映画になったと思います。
そして、作品の中の慎吾ちゃんが色っぽくて、一緒にやっててなんかドキドキするようなところがありました。
完成した映画を観て、こんなにすごいことになっているんだと感じて、皆さんに是非観てくださいと言える映画になったと思います。

映画『凪待ち』
リリー・フランキー

白石和彌監督
10月に完成して、その直後から香取さんも「早く皆んなに観てもらいたい」とおっしゃっていて、僕もまさに同じ気持ちで、たぶん、誰も観たことがない香取慎吾さんがこの映画の中にはいると思います。
心の救済を描いた映画です。

映画『凪待ち』
白石和彌監督

役柄は辛いが、撮影現場は楽しかった

(記事註:以下、香取慎吾さんの発言から、彼はとことん“役柄”と一体化して演じる役者なんだということがわかります。)

– 主人公“郁男”はかつてないロクデナシと言っていい役だと思います。底なしの奈落に転げ落ちていく郁男という男性を演じられていかがでしたか?

香取慎吾
(郁男役を演じている間は)辛かったですね。
人の優しさがこんなに痛いものなんだと思った撮影期間でした。
周りの自分以外の役の人間から、優しい言葉をかけられればかけられるほど、不甲斐なさを感じ、そんな時間でした。
撮影現場そのものは辛いと思ったことは一つもないくらいに全部楽しかったです。僕はそんなに撮影現場を楽しいと思う方じゃないんですけど・・・

(記者席笑)

香取慎吾
アレ?おかしいですか?今の?
撮影現場はものすごく楽しかったです(笑)
それはやっぱり映画は監督のものだって僕は思っているんですけど、白石監督が監督をしている姿、白石監督に全スタッフが、キャストがついていって一つになれている、その白石組の現場にいるのがとっても楽しかったです。
僕が今までやらせていただいた役ってけっこう、今一緒にいない相手のことを思って走り出すんですよね。
走り出して、みんなのいるところに行って大きな声で「お前らxxxxだ!」ってすごく正義をぶつけちゃうんですよ。そのために走るカットが増えるんですけどね。
それが今回の郁男はもう、“ここお前走んなきゃ!あの人のために”って時に必ず誰かの背中の後ろに隠れる。そこはやったことが無かったので気持ちよかったですね。

香取慎吾と共演するということ

– そんな香取さんと白石監督とご一緒されていかがでしたか?

恒松祐里
私の中で香取さんはスターですので、その香取さんと今回ご一緒できるというのは、すごい嬉しかったですし、白石監督の映画もずっと観ていて、このお二人のタッグに私も入らせていただけるということがすごく光栄です。
でも、撮影現場の香取さんは、“郁男”じゃない期間は、すごく明るくて優しいお兄ちゃん的な方で、誰に対しても分け隔てなく接してくださって、ほんとに現場に居やすかったなと感じております。

香取慎吾
いいですよ、もっと言ってください。

恒松祐里
(笑)すごい、素敵な方でした。

吉澤健
香取さんの芝居はとてもナチュラルで、いいなぁとお思いました。
彼の義理の父親的な役柄ですが、私は子供はいるんですが、みんな娘なのもあって、香取さんの父親役をやって楽しかったです。
白石監督とは、25年くらい前、彼がまだ助監督の頃からの付き合いで、監督は私の特質を捉えていらっしゃいますし、すごく粘りのある監督です。そこがすごいところです。

– リリーさんは、リリーさんがラジオの構成作家をされている頃から香取さんとはお知り合いということですが、今回このように作品でご一緒されていかがでしたか?

リリー・フランキー
20年以上前ですかね。

香取慎吾
そのラジオ、まだやってるんですか?

リリー・フランキー
そうなんです。番組が始まった頃、僕は構成をしていて、裏方として香取さんとお会いしてたんですが、映画とかで接するのが申し訳ないというか照れくさいというか、「構成のお兄さんですよね?」という(慎吾ちゃんの)目がやっぱりまだあるわけですよ(笑)

香取慎吾
ないです!ないですよ(笑)

リリー・フランキー
構成をやっている時から、ミニドラマみたいなのを、草彅くんと一緒にやってもらってたんですけど、お二人、ほんとに忙しいさなかですから、スタジオに来て、台本を初見でいつもラジオドラマをやっていただいてて。その時から「すごいなこの人たち」って思っていたんですよね。(台本を)読みながら役作りを瞬時にしてやっていて。
こうやって20数年経って、違う形で一緒にお芝居をさせてもらって、改めて“香取慎吾という人の凄さ”を目の当たりにしました。

香取慎吾
嬉しいです、ほんとに。リリーさんと共演できたのもほんとに嬉しかったので、裏方としてラジオでやっていた頃から、リリーさんがお芝居をするようになって。それからリリーさんの作品をたくさん観させていただいて、いつか共演できたらなって思う人になっていましたので。

リリー・フランキー
ほんとですか?

香取慎吾
ほんとですよ!
だから、今回ほんとに嬉しくて。

リリー・フランキー
今回みたいに素晴らしい脚本で白石さんと一緒になって。昔、くだらないコントのような脚本を書いてたのが申し訳ないなって思い出しましたけど(笑)

映画『凪待ち』

『凪待ち』に込めた想い

– 監督と赤城Pは『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』で組まれていますが、今回、この作品に込めた想いをお聞かせください。

白石監督
今までエンターテイメントを作ってきたんですが、今回、映画の舞台を石巻にしたことも含めて、香取さんとタッグを組むということで、香取さん自体がもちろんスーパースターなので、エンタメ感を無理に出さなくても、これはたぶん何やっても映画になるんじゃないかって思ってました。
なので、いつもの僕の映画よりは、暴力描写とかエグさっていうのはそんなには無いのかもしれないですけど、その分、心の救済を人間ドラマとして描いていければなという想いで作った映画なので、今までの僕の映画の位置づけとしては新しい挑戦の映画になったと思っています。

赤城プロデューサー
監督とは長い付き合いで今もいくつかの企画を進めています。
そういう中で、登場人物に、ある悲劇が理不尽な形で降りかかった時に、その人間はそれからどうやって生きて再生していくのかというテーマを、白石監督とずっと前からやってみたいというのがあったんです。
そして今回、香取さんと映画を撮れるという機会が巡ってきたのが、この『凪待ち』の企画の最初です。
お客さんは、『凪待ち』という映画は、香取慎吾さんにとっても新しいと同時に、白石監督にとっても新しいというように感じられるかもしれません。もしそうであればとても嬉しいことだと思います。

共演者との印象について

– 恒松祐里さん、吉澤健さんとのシーンで印象に残っているものは?

香取慎吾
吉澤さんの役の優しさが痛いところがいっぱいありましたね。
あまり多くを語らないんですけど、僕の役の郁男に対して、吉澤さんの姿というか、一瞬見つめられるだけで、「お前ダメだな。でもダメでいいんだぞ」とか、いろんなことを言ってくれているその心の声がもう痛くて。
吉澤さんの役とは目を合わせているようで、ちゃんと合わせられなかったかなと感じています。

吉澤健
そうですね。でもなんというのかなぁ、胸の中の方ではお互い響き合っていたと思いますね。演じている時も香取さんからそれが返ってくるのを感じました。

香取慎吾
恒松さんとのシーンは、ちょっとホッとする瞬間でもありましたね。
一緒にゲームをしていたりとか、映画全体の中でも、娘のようで友だちのようで、他では見せない郁夫の顔があったので、生きることが辛くて、いろいろと考えなければいけないことがいっぱいあるんですけど、彼女とのシーンの時はあんまりそういうことを考えないで一緒にいられるシーンが前半は多かったので、ホっとできる時間でしたね。

お祭りのシーンについて

(記事註:本作の見どころのシーンの一つとして、長回しのお祭りのシーンがあります。このシーンについての質疑応答の注目点は、記者の質問に対して、香取慎吾さんはやはり“役柄になりきっている心境”の観点で答えようとしています。しかし、その後、リリー・フランキーさんは、アクション全体の観点から語りだし、話はその方向に転換します。)

– お祭りのシーンが迫力ありましたが、苦労した点は?

香取慎吾
お祭りのところはもう縋(すが)る思いでしたね。リリーさんの役の人が、「この人しか自分にはいない」って思わせてくれる人で。

リリー・フランキー
そのシーン、すごかったですよね。
けっこうな長回しで、いろんな人やモノを巻き込みながら、あれを成立させられるのは、ほんとに慎吾ちゃん、すごいなと思いました。すごい迫力で。

香取慎吾
殴る、蹴る、殴られる、蹴られる。もうこういうシーンはほんとに殴っちゃったらしょうがないっていうくらいで。血だらけにもなりました。

リリー・フランキー
まぁまぁ、当たってたよね(笑)

香取慎吾
看板の角とかは、始まる前に僕とアクションの方と話して、とにかく当てていこうと。
当たらなくてNGになるのがいちばん最悪だし、すごい長いカットだったので、もう、ほんとにやってやろう!という気持ちでやりました。
その最後にリリーさんがかけてくれる言葉とかで救われましたね。

白石監督
ひとつ反省点は、大きな氷を香取さんに投げてもらうはずだったんですが、重いし滑るし、持ち上げられないという(笑)

香取慎吾
それは想定内でしたよ(笑)なんか、この映画の裏設定で「慎吾ちゃん演じる郁男は力持ち」というのがあったそうですが、あれだけでかい氷は持てない。なので、最後は蹴ってました(笑)

リリー・フランキー
力持ちって、違う映画になっちゃうじゃない(笑)

事前準備はしない

(記事註:ここでの香取慎吾さんの“事前準備しない”という回答は、先ほどのリリー・フランキーさんのラジオドラマ時代の話とも繋がりますし、後日配信予定の白石監督インタビューでも同様のことが語られます)

– 今回の役どころで事前に準備されたことは?

香取慎吾
基本的に事前の準備は一切しません。
その時の僕が自分にできる一番をするしかないと思っているので。

自分の闇を今このタイミングで出せるのがありがたい

– 白石監督と香取さんとの初タッグはいかがですか?

白石監督
初日のファーストシーンから、ずっとゾクゾクしっぱなしで、逆にゾクゾクを通り越していちいち笑けてくるくらい、香取さんが良かったです。
ひとつだけ少しお話すると、お金を借りるシーンがあるんです。香取さんは人からお金を借りるほど生活が困っていることは無いと思うんですけど、お金を借りた後の「ほんとにすみません」っていう言い方が、「なんでできるんだろう」っていうか、「これどこかで見たことあるな」みたいな、そのリアリティのある表情の作り方だったり、色気の感じとか、素晴らしい存在感だと思いました。
また、なにかあったらほんとにお願いしたいです。

香取慎吾
白石監督とお仕事ができてほんとに嬉しく思っています。
監督が今まで作られてきた作品と僕が組むことになって、あまり今まで見たことが無い香取慎吾を見れるかもしれないんですけど、やっぱり人は誰でも心の中に狂気の部分、闇だったり、皆さん、持っていると思うんです。
そっち方向の僕としては白石作品はすごく好きだったので、あまり自分の中には香取慎吾として突拍子もないこと、新しいことをやっているというよりかは、すごく好きな部分をやっとできたっていう方が強いかもしれません。

– その“狂気”の部分っていうのが、白石監督によってスクリーンに描き出されているという思いはありますか?

香取慎吾
ありますね。それが今、このタイミングっていうのは自分にとってありがたいと思っています。

香取慎吾 - 映画『凪待ち』

最後にメッセージ

香取慎吾
ずっとこの映画の公開を待ってました。
撮影は昨年だったんですが、今の石巻と、郁男っていう再生しなければいけなくなった人間の姿がたくさん詰まった映画になっていると思います。
人は誰もがいつでも前向きになれることは無いと思うんですよね。
でもなんとか前を向いていないといけないんです。生きている限り。
そんな男の姿を見て、少しでも自分も前に進んでみようかなって思ってくれる方がいたらいいなと思っています。よろしくお願いします。

白石監督
人間、どんなタイミングなのかわからないタイミングで人生から転げ落ちてしまうことも多々、あると思います。ただ、同時に、生き方次第で、どん底からもなんとかやり直せるタイミングや可能性というのは、同じくらい人間は持っていると思います。
この作品は、いつでも人生をやり直せるとか、ほんと、前に向かって歩いていこうとか、いろんなことを感じていただける映画になっていると思います。この映画はできるだけ多くの人に届けたい映画です。皆さん、是非応援よろしくお願いします。

フォトギャラリー

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香取慎吾
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白石和彌監督
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赤城聡プロデューサー
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赤城聡プロデューサー

映画『凪待ち』

主演:香取慎吾、恒松祐里、西田尚美、吉澤健、音尾琢真、リリー・フランキー
監督:白石和彌 脚本:加藤正人
配給:キノフィルムズ ©2018「凪待ち」FILM PARTNERS

予告編

2019 年 6 月28日 TOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー

[写真・記事:Jun Sakurakoji]

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