山田洋次監督『男はつらいよ お帰り 寅さん』について語る。

9月26日、第32回東京国際映画祭のラインナップ発表記者会見が六本木アカデミーヒルズで行われ、本映画祭のオープニング作品となった『男はつらいよ お帰り 寅さん』の山田洋次監督が登壇した。(動画)

山田洋次監督は、この作品について「50年かけて作ったんだなぁ」と振り返ると共に、「(渥美清さんは)山田さん、よくやったねってニヤニヤ笑うかな」と、故・渥美清へ思いを寄せた。

山田洋次監督質疑

山田洋次監督
『隠し剣 鬼の爪』以来、また僕の最新作『男はつらいよ お帰り 寅さん』がオープニング作品ということで光栄に思っています。

山田洋次監督
山田洋次監督

笠井信輔
寅さんの最新作を東京国際映画祭のオープニングでお披露目できるというのはどんなお気持ちですか?

山田洋次監督
この作品の特徴はなんといっても50年かけて作った作品という感じがするんですよね。
自分でできあがった映画を観てね、「あぁ、50年かけて作ったんだ」っていうことがわかって、不思議な思いを抱いたんですけど、自慢できるのはそこだけでありまして(笑)、その意味でオープニングに選ばれたんじゃないかなと思います。

笠井信輔
「おかえり寅さん」というタイトルですけれども、寅さんがスクリーンでどんなふうに蘇るのか、そこが気になってしょうがないという全国の皆さんがたくさんいるんですけれども、これまで49作品ありました。そのどの寅さんのシーンを引っ張り出してくれば、素敵で面白くなっていくのか悩まれませんでしたか?

山田洋次監督
一番悩んだところですね。中にはCGで寅さんを作るのかって思ってた方もいらっしゃいますがそういうことはしない。
しかい、もう40年、50年前のプリントでもデジタルリマスターすることで非常に綺麗になるんですね。だから古いフィルムだからと言って決して劣化しているわけじゃない。完全にニュープリントと同じ状態ですから、カットバックしても違和感がぜんぜんない。それだけはデジタルは素晴らしいと思っています。

笠井信輔
このシーンは絶対使いたいとか、ここのシーンは使いたいけど使えなかった、いろんな思いが編集作業の中にはあったのではありませんか?

山田洋次監督
どうしても使いたいなと思ったのは、寅さんの妹のさくら・・・

笠井信輔
あ、言わないほうがいいですよ(笑)それは観てのお楽しみに。

山田洋次監督
50年前の映像のそこは使いたいと思いました(笑)

笠井信輔
ここを使おうというのはすぐに決まりましたか?

山田洋次監督
それは作りながら、あるいは出来上がって編集しながら最後の最後まで、あっちのカットを持ってきたり、フラッシュでもいいからちょっと入れてみたらどうだろうとか、それは最後の最後まで悩みました。

笠井信輔
49作品もありますから、その悩みは並大抵のものではなかったと思いますがいかがでしたか?

山田洋次監督
(編集作業は)面白かったですね。楽しみでもありましたね。

笠井信輔
今回は東京国際映画祭です。日本だけでなく、この50年かけた寅さんの作品を観ていただけるということなんですけれども、それに対してはどんな思いでいらっしゃいますか?

山田洋次監督
そうですね、長い期間をかけて撮ったというのはいろいろありますけれども、せいぜい17、8年でありまして、50年というのは他には無い。それだけは僕は観ていただきたいところですね。これから先もそんなことは無理でしょうからね。

笠井信輔
倍賞千恵子さんはじめ、キャストの皆さんもそのまま齢を重ねていらっしゃるわけですもんね。

山田洋次監督
そうですね、普通はだいたい若い俳優が入れ替わるところを入れ替えないでやっているわけだから。

笠井信輔
今回“奇跡の復活”というキーワードがございますけれども、監督はこの作品のどんなところに奇跡を感じますでしょうか?

山田洋次監督
やっぱり脚本を書いている時、あるいは撮影をしている時にはわからなかったことがある。それはこのシーンの中に何十年昔のカットを入れたらどういう効果があるかというのは、それは何度も何度も編集し直したものをラッシュで見ながら発見していくことでしたね。
脚本の段階では決してわからないことがたくさんあって、そういう発見が僕にとってはさっきも言ったように面白かったです。

笠井信輔
それはやはり映像の持つ力ということでしょうか?

山田洋次監督
映像といいますか、編集によって。黒澤明さんが「映画っていうのはカットをつなぎ合わせて作るものなんだけれども、カットのつなぎ目に魔法が働くんだ」っていうことをよくおっしゃってましたけれども、その魔法が僕にもちょっと感じられた気がしましたね。

笠井信輔
監督は完成した作品をご覧になって改めてどんなことを感じられましたか?

山田洋次監督
繰り返し言いますけれども、50年かけたんだなぁと。僕も長生きしてよかったなと、そういう感じですね(笑)

笠井信輔
渥美清さんがこの作品をほんとにご覧いただければと思うんですけれども、もしご覧になったとしたら、どんな言葉を監督におかけになると思いますか?

山田洋次監督
そうねぇ、「山田さん、よくやったね」って言ってニヤニヤ笑うでしょうね。

山田洋次監督

笠井信輔
最後になりますが、皆さんに一言お願いします。

山田洋次監督
皆さんに是非この映画を観ていただきたい。そして、「若いころよく観たな」って方はたくさんいらっしゃるだろうけれども、寅さんを観たことがないっていう人たちにもたくさんいるに違いない。そういう人たちにとってもこの映画は大変楽しくて、ちょっと不思議な色合いを持った作品になると思いますから、多くの人に観ていただければと心から思っております。

<第32回東京国際映画祭 開催概要>
■開催期間:2019年10月28日(月)~11月5日(火)
■会場:六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区) 、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場(千代田区) 他
■公式サイト:www.tiff-jp.net

[写真・記事:Jun Sakurakoji]