ブルーアワーにぶっ飛ばす
箱田優子監督/映画ライターSYO

9月17日アキバシアターにて、主演・夏帆『ブルーアワーにぶっ飛ばす』の先行上映が行われ、上映後に箱田優子初監督、そして、“今年10本の指に入る映画”と絶賛する映画ライターSYOが登壇。本作の魅力について語った。

トークイベントでは、箱田監督は、夏帆が演じる売れっ子CMディレクターの“砂田”について、箱田監督自身のキャラクターに近しいと語った。一方で、「世間の10代の頃からの夏帆ちゃんのイメージがある中、28歳になった今の夏帆ちゃんそのものを見てみたい」とも思ったという。
そのため、クランクイン前には、腹を割って話す飲み会を開いたり、「脚本をコンプリートするんじゃなく、夏帆ちゃん自身を出して」という話もしたと明かした。
事実、2018年11月15日に行われた「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM 2018」に登壇した夏帆は、本作出演について「ほんとに自分をさらけ出す感じで演じました。」と語っている。

夏帆『ブルーアワーにぶっ飛ばす』
シム・ウンギョン/夏帆/箱田優子監督(TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM 2018にて撮影)

映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』
【Story】
30歳の自称売れっ子CMディレクター・砂田(夏帆)は、東京で日々仕事に明け暮れながらも満ち足りた日々を送っている…ように見えるが、口をひらけば悪態をつき心は荒みきっている。
ある日、病気の祖母を見舞うため、砂田の嫌いな故郷に帰ることに。ついて来たのは、砂田が困った時には必ず現れる、自由で天真爛漫な秘密の友だち・清浦(シム・ウンギョン)。
しかし、再会した家族の前では、都内で身に着けた砂田の理論武装は通用しない…やがて全てを剥がされた時、見ようとしなかった本当の自分が顔を出す―。そして、一日と始まりと終わりの間に一瞬だけおとずれる“ブルーアワー”が終わる時、清浦との別れが迫っていた…。
出演:夏帆 シム・ウンギョン ほか
監督・脚本:箱田優子
10月11日(金)より、テアトル新宿、ユーロスペースほか全国公開

トークイベントレポート

ブルーアワーにぶっ飛ばす
箱田優子監督/映画ライターSYO

夏帆が演じる“砂田”は、箱田監督そのもの

– 本作をご覧になっていかがでしたか?

映画ライターSYO
試写室で観た後、泣いてしまいました。
理論武装という鎧を着て生きている方、自分も皆さんも少なからずそうだと思うんですけど、そういう人の鎧というものが剥がれていくさまを見ると、自分自身も救われるような気持ちになります。
この映画は、そういう、ありのままでいていいんだよっていうことを肯定してくれる作品なのかもなぁと思いました。すごく多幸感に溢れる映画だと感じました。
攻撃的なセリフがカッコいいとは思うんですけど、観た後にこんなに穏やかな気持ちになるとは思ってなくて。で、泣きました。

映画ライターSYO
映画ライターSYO

箱田優子監督
私、今作が初脚本・初監督なんですけど、主人公の砂田(夏帆)は私に近しいキャラクターで作っているというのもあって、映画祭とかで毎回言われるのは「(上映後に)お前、すぐに出てくるな。余韻に浸っているのに。」って(笑)

箱田優子監督
箱田優子監督

SYO
なるほど、ご本人が登場するみたいな(笑)

箱田優子監督
「台無しだ!」みたいな感じのことを言われるので、今も、すみませんって気持ちです(笑)

SYO
ご自身の内面をしっかりスクリーンに出すというのは、出そうと思われてのことなのか、自然と出てしまったのか、どちらなのでしょうか?

箱田優子監督
たまたまこの脚本を書いたタイミングが、2016年の「TSUTAYAクリエイターズプログラム」のコンペの時だったんですけど、その時、私は33歳で、主人公とほぼ親しい状況、仕事はしているし、結婚もして旦那さんもいて、友だちもいるし、不安なことってそんなに無いでしょみたいな。仕事もそこそこ頑張って、明日食べるご飯に困るほどじゃないみたいな。
別に何の文句も無いはずなんですけど、毎朝毎朝、朝がくるとなんかとてつもなく寂しいんですよ。
今日もまた1日が来てしまった、みたいな。何が寂しいのかわからないんですけど。

SYO
僕は今、32歳なんですけど、幸福に殺される感じがするんですよね。毎日。自分の生活のスケールみたいなものが「何もしなければこのまま続いていくんだろうな」って。
なので今、監督のお話を聞いて、そこにひょっとしたら無意識のうちにシンパシーを抱いたのかもしれないなって思いました。

箱田優子監督
こういうことって、人には言ってはいけない話じゃないですか(笑)「お前、恵まれてんじゃないか。贅沢病か?」って突っ込まれることになりますし。

夏帆をキャスティングした理由

ブルーアワーにぶっ飛ばす

箱田優子監督
本作がクランクインする前に、夏帆ちゃんたちと「他人に今まで言えなかったことを言い合う飲み会」をやったんです。「実はこう思ってたけど、人の目が気になってずっと言えなかった」みたいな。
自分がこれまでしてきた仕事のこと、家族、一緒に暮らすパートナーのこと。などなど友だちにも言えないことってあるじゃないですか。
私も夏帆ちゃんもウンギョンちゃんも、今までずっと消化されないまま、自分の腹に抱えてたなんともいえない気持ちみたいなことを、全部腹を割って喋りました。内容は言えないんですけど(笑)
この映画では、そういった気持を表現しています。なので、この映画を作ったら、私も夏帆ちゃんもどうなっちゃうんだろう?人にどう思われるんだろうって思ったことではあるんですけど(笑)

箱田優子監督
世間の皆さんの夏帆ちゃんのイメージってあると思います。彼女の10代の頃のイメージも含めて。
夏帆ちゃん自身も、10代の頃はどう、今はどうって、外からの評価も身にしみてわかっています。
今彼女は28歳ですけど、10代から10数年経った今、どう思っているのかってことを、私はどうしても見てみたくて。
夏帆ちゃんのドキュメンタリーじゃないですけど、そういう部分も撮ってみたいなって思った部分がすごくありました。
なので、夏帆ちゃんには、脚本をそのままコンプリートしてもらうっていうよりも、夏帆ちゃん自身を出してほしいみたいな話を最初にしたんですよ。っていうのもあって、普段言えないことを言い合う飲み会をやったんです。
世の中の夏帆ちゃんのイメージってすごくスマートで、スッとしててクールでみたいな感じかもしれませんが、実際に本人に会うと、(監督自身を指差して)こんな感じなんですよ(笑)ウーロンハイ濃いめでとか言うんですよ(笑)

SYO
自分たちが、普段見せずに隠してきたことが、この映画ではちゃんと表現されているっていうことですね。

箱田優子監督
そうです。なんかもう脱ぐ服が無いほどに(笑)全裸状態です(笑)全裸監督を地で行っているみたいな(笑)

ブルーアワーにぶっ飛ばす

清浦(シム・ウンギョン)は砂田(夏帆)を補完する存在

SYO
だからこそ、僕も観たあとに泣いてしまったんだろうと思うし、男性とか女性とかのジェンダーを飛び越えて、今生きている人にちゃんと届くんじゃないかなって僕はすごく思いました。
作られている方がほんとにすべてさらけ出してくれてるんだなっていうのがすごい伝わってきました。そういう意味でも幸せな映画を観たなって思います。

箱田優子監督
幸せって言われるのは斬新ですね(笑)
今、本作をご覧になられた方は何を感じられてるのでしょうね。清浦(シム・ウンギョン)って何なんだってことも考えられているのかもしれない。私、清浦のことについて語りだすと泣いちゃうんですよ(笑)清浦が「砂田(夏帆)が好き」って言えば言うほど悲しくなるんです。清浦は、砂田に無いものをほぼ持っている存在で、いわば砂田を補完するような存在でもあるから。

SYO
この映画では、笑えるようなセリフを言っている時に泣けるとか、攻撃的なセリフを言っているのに内面を考えると泣けてしまうという相反する感情というものが綺麗に出ています。だからこそ、悲しいシーンで悲しいことを言うっていうのとは真逆の方がより引き立つという点がリアルに表現されていると思います。

箱田優子監督
生きる・死ぬみたいなセリフが出てくるけど、(役者たちには)そういうことも軽々しく言ってねと。
ウンギョンちゃんは脚本の読みが誰よりも深く、自分が演じる役のポジションについて最初に会った時からかなりわかってくれていたので、そういう生き死にに対する考え方とか、砂田に対してどうだとかも、彼女として調整してくれているところがすごい面白かったです。

『ブルーアワーにぶっ飛ばす』=『ロッキー』??

SYO
ぜんぜん違うんですけど、僕はこの映画を観て、なぜか『ロッキー』を思い出して(笑)

箱田優子監督
ハハハ。でも近しいですよ(笑)「ぶっ飛ばす」だし(笑)

箱田優子監督

SYO
『ロッキー』ってハッピーな映画に見えるけど、前半はぜんぜんそうじゃないじゃないですか。
今の自分がこのままだとなんか堕ちていくんじゃないかなっていう不安を抱えている人がいるっていうところ。
その中で少しずつ現実に立ち向かっていくというところが僕の中で『ロッキー』とリンクしたんです。

箱田優子監督
砂田ってずっとグチグチ言ってるし、設定上いいヤツじゃないんですけど、砂田の良いところって前に進むことだけなんで(笑)
「止まらない」っていうことだけは選択しているヤツなんで、そこだけは私はすごい好きなんです。

これからご覧になる方にメッセージ

SYO
この作品は個人的に今年のベスト10に入れたい作品だなと思っています。何回も何回も観るごとに設定厨というか、構造で楽しむっていう自分を、エモな部分がぶっ飛ばしてくれる。「これはどういうことなんだろう」ってあれこれ考えている自分を、生の感情が吹き飛ばしてくれる素晴らしさがある映画だなと思います。

SYO

箱田優子監督
東京生まれ東京育ちの夏帆ちゃんが、「地元の田舎に帰って云々のロードムービーっていうことよりも、どうやったって過ぎゆく時間みたいなところに私はすごい惹かれたんです」っていう話をしてくれました。
実際、誰もが歳をとっていくし、時間がどんどん過ぎていくわけです。この映画は2018年夏の集大成なんですが、もし、来年とか再来年とか、時間が違うところで撮ってたら、きっとこういう作品にはなってないとも思います。
今の瞬間が過ぎ去っていく時間の中で、じゃあ自分は何をするかなみたいなことをちょっとでも意識できる映画になれたらいいかなって思っています。

箱田優子監督

[写真・記事:Jun Sakurakoji]

映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』

【Story】
30歳の自称売れっ子CMディレクター・砂田(夏帆)は、東京で日々仕事に明け暮れながらも満ち足りた日々を送っている…ように見えるが、口をひらけば悪態をつき心は荒みきっている。
ある日、病気の祖母を見舞うため、砂田の嫌いな故郷に帰ることに。ついて来たのは、砂田が困った時には必ず現れる、自由で天真爛漫な秘密の友だち・清浦(シム・ウンギョン)。
しかし、再会した家族の前では、都内で身に着けた砂田の理論武装は通用しない…やがて全てを剥がされた時、見ようとしなかった本当の自分が顔を出す―。そして、一日と始まりと終わりの間に一瞬だけおとずれる“ブルーアワー”が終わる時、清浦との別れが迫っていた…。

出演:夏帆 シム・ウンギョン 渡辺大知 / 黒田大輔 上杉美風 小野敦子 / 嶋田久作 伊藤沙莉 高山のえみ /
ユースケ・サンタマリア でんでん 南 果歩
監督・脚本:箱田優子 製作:中西一雄 企画プロデュース:遠山大輔 プロデューサー:星野秀樹
撮影:近藤龍人 照明:藤井 勇 録音:小川 武 美術:井上心平 編集:今井大介 音楽:松崎ナオ
製作:「ブルーアワーにぶっ飛ばす」製作委員会
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント
制作プロダクション:ツインズジャパン
配給:ビターズ・エンド 2019 年/日本/カラー/アメリカンビスタ/DCP5.1ch/92 分 (C)2019「ブルーアワーにぶっ飛ばす」製作委員会
公式サイト:www.blue-hour.jp

予告編

10月11日(金)より、テアトル新宿、ユーロスペースほか全国公開!

ブルーアワーにぶっ飛ばす

TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2016 審査員特別賞受賞
第43回香港国際映画祭 ヤング・シネマ・コンペティション部門 正式出品
第19回ドイツ日本映画祭「ニッポン・コネクション」ニッポン・ヴィジョンズ審査員スペシャル・メンション受賞
第22回上海国際映画祭アジア新人部門 最優秀監督賞&優秀作品賞受賞
第21回台北映画祭国際 ニュータレントコンペティション部門 正式出品
第13回 JAPAN CUTS~ジャパン・カッツ!正式出品

メイン-s.jpg
写真①-s.jpg
写真②-s.jpg
写真③-s.jpg
写真④-s.jpg
写真⑤-s.jpg
写真⑥-s.jpg
写真⑦-s.jpg
写真⑧-s.jpg
写真⑨-s.jpg
箱田優子監督-s.jpg
箱田優子監督
ティザービジュアル-s.jpg
本ポスタービジュアル-s.jpg