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『アルビノの木』

海外映画祭で11冠達成!映画『アルビノの木』。いよいよ凱旋上映最終日

『アルビノの木』

金子雅和 監督 / 矢田部吉彦氏(東京国際映画祭 プログラミング・ディレクター)

5月4日、ついに映画『アルビノの木』の劇場での上映最終日となる。
世界各国の国際映画祭で11の賞を受賞した同作。
日本の風景のはずなのにそれとは思えない雄大な風景が美しい映像でひろがる一方、非常にテンポが早い物語の進み方で観るものをグイグイと引き込む。
多くの映画がそうであるが、同作も劇場で観ることの素晴らしさを体感できる作品となっている。
記事では、5月2日に行われた、矢田部吉彦氏(東京国際映画祭 プログラミング・ディレクター)× 金子雅和 監督ゲストトークの模様を紹介。

『アルビノの木』凱旋特別上映は5月4日まで

金子雅和 監督からの告知

劇場公開日最後ということで、金子監督からのメッセージ動画を紹介。

YouTube player

『アルビノの木』凱旋特別上映
4/21(土)~5/4(金祝) 20:00~21:35
劇場:池袋 シネマ・ロサ(東京都豊島区西池袋1-37-12ロサ会館内地下)
特別料金:一般1500円、大学生1300円、シニア・高校以下1000円

害獣は、果たしてどっちなのだろうか――
農作物を荒らす害獣駆除に従事する若者が、山の人たちが長いこと大切にしてきた特別な存在の一頭の白鹿を撃つために、山に分け入っていく。自然体系が破壊され、獣たちが餌を求めて人里に下りてくる。動物が生きていく術を無視し、私たちは彼らを害獣と呼ぶ。昨今話題の害獣駆除に携わる若者の苦悩を描いた本作はまた、自然破壊であったり、これまで積み上げてきた文化をないがしろにすることであったり、雄大な自然にエゴイズムだけでしか対峙できない現代日本社会の記録でもある。

【CAST】松岡龍平、東加奈子、福地祐介、増田修一朗、山田キヌヲ、長谷川初範ほか
【STAFF】監督・脚本・撮影・編集: 金子雅和 照明:白石宏明 録音:間野翼 美術:金子美由紀 助監督:滝野弘仁 音楽:石橋英子
配給: マコトヤ (C)kinone
【DCP/16:9/5.1ch/カラー/2016/日本/86分】 公式サイト:http://www.albinonoki.com/

『アルビノの木』

『アルビノの木』人物相関図

矢田部吉彦氏と金子雅和監督の出会い

静岡県小山町という映画の街

群馬県高崎市など、昨今、自治体がフィルムコミッションを立ち上げて、映画制作を支援するという形の地方創生活動が活発化している。
静岡県小山町もその一つで、昨年度行われた「小山町フィルムクリエーターズアワード2017」に、金子監督が企画応募、矢田部氏が審査員という形で出会ったのがきっかけ。
そのアワードでは、金子監督が見事大賞を受賞し、監督の次回作品はこの時の企画がベースとなった作品になるという。

小山町フィルムクリエーターズアワード2017
公式:https://compe.japandesign.ne.jp/ofca/

ゲストトーク

『アルビノの木』

矢田部吉彦氏(東京国際映画祭 プログラミング・ディレクター) / 金子雅和 監督

風景映像が美しい

金子雅和 監督
今日初めてスクリーンで『アルビノの木』をご覧になってどういう印象でしたか?

矢田部吉彦
映像が美しく、特に風景映像が素晴らしかったです。
いわゆるステレオタイプ的な日本風景ではなく、これは南米?と思わすような日本らしからぬ雄大なスケールの大きい景色に感じました。
監督は、脚本があってそれに合うロケ地を探したのではなくて、先にロケ地を探して、あて書きをしたのかなと思ったんですが、いかがですか?

金子雅和 監督
同時進行なんですけど、大きな枠組み、白鹿と漁師が出てくるというところと、現代の映画なんだけども、民話であったり神話であるような映画を作りたいというところからスタートしています。
で、シナリオを書きながら、民話・神話に合うようなロケ地を探していました。
2008年の夏に構想が始まって、撮影開始したのが2014年の夏でした。
で公開されたのが2016年で、約8年くらいかかっています(笑)

矢田部吉彦
なぜあんなに迫力ある映像が撮れてしまうんでしょう?

金子雅和 監督
その土地がいちばん綺麗に撮れるタイミング、光の差し方だったり、天気だったり、季節だったり。
5年くらいの構想期間があるので(笑)、この季節のこの時間はこういう絵になるっていうのを蓄積していきました。

動物でもあり植物でもある不思議な生態

矢田部吉彦
なぜ最初、鹿と漁師だったんですか?

金子雅和 監督
民話・神話をやりたいと思ったんですが、日本各地に白鹿伝説というのが残っているんです。
鹿は動物なんですが、その角が植物的でもあるなとそういう生態に不思議さを感じたからです。
漁師は、その鹿と対象的なものとして。

矢田部吉彦
この映画がいいなって思ったのは、話の展開がすごくストレートで、ダレる時間がない。
見せ方の雄大さと話のテンポの進め方のうまさっていうのが素晴らしいなと思いました。

『アルビノの木』

金子雅和 監督が「植物のよう」と表現した鹿の角(本物)

狩猟免許を取ったからこそのシーン

金子雅和 監督
シナリオを書いていくうちに、猟銃の世界はどうしても専門的な部分があるなということで、自分でも狩猟免許を取得したんです。
そしたら試験で、30秒以内に銃を組み立てろというのがあって。
だったら、(分解した状態で)カバンにしまうこともあるんだとわかって、主人公が銃をカメラバッグに隠して持っていくというシーンができました。

『アルビノの木』

海外が日本映画に求めるもの

金子雅和 監督
海外の方々は、日本映画にどういうものを求めてますか?

矢田部吉彦
新しい日本の監督が求められているっていうのは常にあるものの、やっぱり、小津安二郎監督の名前も出てきます。
家族の物語が日本人は得意ですよねってとこから、日本的な家族の物語を期待しているっていう声はちょこちょこ聞きます。
日本的なことを期待しているんですけど、あんまり日本的すぎると理解ができないし、どういう人にも伝わるような普遍性を持ちすぎると、面白いんだけど、日本映画っぽくないよねってなって、こういう映画だったらウチの国にもあるよって思われてしまうので、そこの見極めっていうのがとても難しいと思います。

で、この『アルビノの木』は都会と田舎の格差というどこの国にでもあるテーマを扱っていて、で、日本独自の風景なんだけど、日本っぽくない風景にも見えて。
日本らしさとそうでないところの微妙なところをついている映画なので、海外で受け入れられると思います。

若手映画作品の傾向は?

金子雅和 監督
東京国際映画祭ではジャパンスプラッシュ部門という若手監督の映画作品を選定するものがありますが、応募してくる作品の最近の傾向ってありますか?

矢田部吉彦
今の日本映画ってわりと予算がない。他国と比べても。
非常にアーティスティックな映画を撮ってる人、美とエロスを出しながら攻めてくる人、そして相変わらず、これはあまり大きい声では言えないんですけど、高校生ものがとてもとても多いですかね。
女子高生を主人公にした映画作品がとても多い。
これを言うとまたいろんなところで炎上しちゃうんですけど(笑)、もう少し大人の世界を描いてもいいんじゃないかなと思うことはありますね。
ただ、とても多くの方が作っているので、非常にバラエティに富んでいます。
特に昨年は、豊作・秀作の年で、選定にとても苦労するくらいいい感じになってきています。

低予算で作られる日本映画

金子雅和 監督
先日、海外の映画監督の方とお話する機会があったんですが、やっぱり今の日本で、これだけ低予算でたくさん映画が撮られている現状は、世界的に見ると異常に感じるそうです。
海外ではロケーション撮影するのにはお金がかかるという常識があって、『アルビノの木』の低予算さに驚かれました。

矢田部吉彦
日本の映画監督の方が海外の方に自分の映画の予算を言うと、とても低いと驚かれるという話はよく聞きます。
僕も、この予算で3本の映画を撮るんだったら、まとめて1本の大きな映画を撮った方がいいんじゃないかなと思うことはあります。

『アルビノの木』

『アルビノの木』の海外での反応

矢田部吉彦
『アルビノの木』の海外での反応はいかがでしたか?
欧米よりはアジア圏の方が侘び寂びが通じやすかったりしますか?

金子雅和 監督
それが意外に逆だと感じました。
北京の映画祭に行ったんですけど、北京はエンタテインメント要素が強い作品が好きな客層で、アメリカ映画的なものが好きなお客さんが多いです。
逆にヨーロッパの方が、都会と田舎の対立というところをしっかりと観てくれた印象があります。
あと、どこの国でも共通しているのは、アニメーションが強い。
そのせいか、『アルビノの木』は、『もののけ姫』との比較をよくされました(笑)
『もののけ姫』と比較するとスケールが小さいねとか(笑)
厳しいなぁみたいな(笑)

矢田部吉彦
それはちょっとねぇ(笑)、ジブリと比較されてもねぇ(笑)

ミニシアターという独特のカタチ

金子雅和 監督
海外の方から、「こういうインディペンデントな映画は、日本ではどこで上映されているの?」と聞かれたことがあります。
で、日本にはミニシアターというものがあってそこで公開できるんだって答えると、すごく羨ましがられました。
海外ではこういうミニシアターという形態はほとんど無いそうです。

矢田部吉彦
これは羨ましがれますよね。
日本映画に限らず外国のアート映画が、昔より少なくなったとはいえ、上映する文化が残っているっていうのは東京は、アジアではほぼ唯一かもしれません。

風景と伝承に惹かれる

矢田部吉彦
海外で映画を撮ってみたいところはありますか?

金子雅和 監督
アイルランドとか北欧でロケしてみたいなと思いますね。

矢田部吉彦
やっぱり風景に惹かれるんですか?

金子雅和 監督
そうですね。風景と、あとアイルランドなんかだと神話がすごく残っていますよね。
森があって、伝承があって。そういったものがある国にやっぱり惹かれます。

矢田部吉彦
『アルビノの木』を観て、監督はほんとに森と一体になって撮られたんだなと思います。

金子雅和 監督
森の奥に行けば行くほど、自分の中では気持ちいいというものがあります。
しっくりくるというか、自分の中の感覚がそのまま映像になっている。
撮る時も森の奥に行けば行くほどテンションが上ってました。スタッフのテンションは逆にどんどん下がってました(笑)
役者さんはそうでもないんですが、スタッフさんは重い機材を持ってたりするので。お前、いい加減にしろよ、みたいな(笑)

金子監督の次回作

矢田部吉彦
次回作の構想は?

金子雅和 監督
「小山町フィルムクリエーターズアワード2017」で大賞をいただいた作品です。
今度は東京が舞台で、これまで大自然を舞台に撮ることが多かっですが、都会というものをどう切り取るかということに挑戦したいと思っています。

矢田部吉彦
それは8年かけないでくださいね。

金子雅和 監督
8年かけないです(笑)

『アルビノの木』

[写真:Ichigen Kaneda / 記事・動画:Jun.S]

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