1人のダンス
映画『1人のダンス』の監督、キャストたち(シネマ・ロサ ロビーにて)

池袋シネマ・ロサで好評上映中の企画「Newcomers! 新人監督特集Vol.3」も残すところ一作品となった。
本特集の第三弾作品『1人のダンス』が5月25日(土)から6月7日(金)まで上映されている。
元々短編映画として企画された本作は、撮影中に衝動的に長編映画になってしまったと監督は語っている。監督本人が出演し、実の親友との喧嘩を描いており、その怒りと衝動のエネルギーが伝わってくる作品。本記事では、5月25日に行われた上映初日舞台挨拶レポートを交えながら本作の魅力を紹介する。

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映画『1人のダンス』(安楽涼監督)は、元々は「音楽×映画」をコンセプトとした「MOOSIC LAB」の企画として作られた短編映画。30分以内の短編映画として企画書を出したにもかかわらず、撮影してみたら約60分になってしまい、MOOSIC LABの上映時には、当初の短編映画とする必要があり編集で30分にして上映された。30分版も納得するまで編集して上映したものの、ラストシーンや女優・大須みづほとの会話のシーンをカットしたことが安楽監督には心残りだったそう。そのため今回、池袋シネマ・ロサで長編版が2週間にわたって上映することが決まった時は、心が躍ったという。

上映までの一か月の宣伝期間、毎日どこかでビラを配ったり、前売り券を売っていた監督は、自分自身が宣伝しないと誰も宣伝してくれないかもしれないという恐怖心を抱いていたそうだ。
本作に出演し音楽も手がけたOOPARTZのRYUICHI(リュウイチ役)と、自ら主役を演じる安楽監督は実の親友。その親友にMVの撮影を断られたときの怒りを抑えられず、その衝動や思いをキッカケに、本人出演でこの映画は作られている。

■解説:映画『1人のダンス』
(公式サイトより引用)

安楽涼(監督・主演 )
本作の音楽も手がけたOOPARTZのリュウイチと、監督で主演の僕は実の親友です。
作る事の出来なかったMV。怒りを抑えられず、本人出演でこの映画を作りました。僕の衝動や思いが映画になるのか、この怒りを他の出来事に例えて映画にした方が良いんじゃないか、と考えはしたのですが。僕は僕の映画を作るしか無かったです。

-STORY
今。これだけは作らないといけなかった。
目の前のことに甘える駆け出しMV監督である安楽は、大事なものを見失っていく。金、女、プライド。
そんな時、親友のミュージシャン、リュウイチからMVの撮影を断られる。
安楽の衝動のダンスが蠢き出す。

舞台挨拶レポート

1人のダンス

5月25日に行われた、初日舞台挨拶の登壇者は15人。司会は新人監督特集vol.3の初日舞台挨拶担当の女優・里内伽奈。
登壇者は、安楽涼監督、OOPARTZ(JUVENILE、RYUICHI)、出倉俊輔、佐藤睦、大須みづほ、片山享、大宮将司、笠井里美、藤本沙紀、朱哩、アフロ後藤、宮寺貴也、キャッチャー中澤、森本のぶ

安楽監督とRYUICHIとの喧嘩が物語のベース

本作の物語は、安楽監督と小学校の同級生(産まれた産婦人科まで一緒とのこと)で親友であるRYUICHIとの喧嘩を発端としている。
安楽監督は、「(RYUICHIが所属する)OOPARTZのMVをいつも撮っていますが、ある時断られたんですよ。それで本当にブチ切れてしまった」と、喧嘩のきっかけを振り返った。
その時、MOOSIC LAB短編映画企画作品を構想に着手していた安楽監督は、この怒りを作品にしようと方針転換。
しかし、脚本を書き始めたものの、怒りの感情が高ぶって筆が進まなかったという。
そんな時「脚本が自分で書けないから書いてくれないか。」安楽監督から電話がかかってきたと、片山享(脚本)は明かした。
片山は、彼自身がいつも話をする「ヒップホップは、怒りと救いなんだ」の考えをベースに、電車の中で一気に脚本を書き上げ、一時間後には安楽監督へ渡したという。
そうして完成した脚本を、安楽監督は、仲直りできないままのRYUICHIに渡すところから本作の製作がスタートした。

1人のダンス
OOPARTZ(JUVENILE, RYUICHI)、安楽涼監督
1人のダンス
片山享、大須みづほ、佐藤睦

地下アイドルMV撮影シーンも安楽監督の実話に基づくもの

劇中に登場する地下アイドルのMV撮影エピソードも、安楽監督の実体験によるもので、物語の展開の重要なポイントになっている。舞台挨拶では、アイドル役を演じた4人の女優が、次のように振り返った。

佐藤睦(ケイ 役)
安楽監督からアイドル役でのオファーがあったことをマネージャーに伝えたら、「(佐藤さんがアイドル役を演じるのは)無理だよ…」って言われました(笑)
劇中で歌っているアイドルグループ「トラストガールズ」の『トラガの憂鬱』という曲は、(共演者の)出倉さんの作詞。振り付けはRYUICHIさんがメインに考えたもので、スタジオで必死に練習しました。

笠井里美(ラン 役)
人生で最初で最後のアイドルをやらせていただきました。

藤本沙紀(アヤミ 役)
アイドルを演じるのは二度目です。(予告編にも登場する)河原での撮影シーンは、体が震えるほど寒かったし、雨が降ってきて、薄い衣装のなので下着が透けるほどでした。過酷な撮影現場でしたね。

朱哩(ヨッシー 役)
片山さんからアイドル役のオファーをいただいた時「私は踊れませんよ」と答えたんですが、片山さんから「それくらいの方がちょうどいい。」と言われました(笑)

1人のダンス
朱哩、藤本沙紀、笠井里美

本作書き下ろしの楽曲

本編随所に、最高のタイミングで流れる楽曲は、この作品のためにつくられたオリジナル。初稿の台本を受け取ってから作曲に着手。「どこから入っても雰囲気がでるように考えて曲をつくった。」とOOPARTZのJUVENILE氏は語った。

一発撮りの緊迫感溢れる河原のシーン

本作のラストの見せ所となる重要な河原のシーン。ここでは、RYUICHIが鬼気迫るキレぶりを演じている。
河原でRYUICHIに相対する輩役を演じた、大宮将司やアフロ後藤は、「RYUICHIさんが全力でキレ返してきて、泣きそうになりながらキレる演技を続けたが、本当に怖かったです。」と振り返った。
また、このシーンの撮影に際して安楽監督は、撮影一発目の緊迫感を表現するために、敢えて台本をRYUICHIに渡さなかったという。

1人のダンス
キャッチャー中澤、宮寺貴也、アフロ後藤、朱哩、藤本沙紀、笠井里美、大宮将司

『1人のダンス』は、みんなの作品

『1人のダンス』は、安楽監督をはじめ、役者どころか、脚本、演出、作詞作曲に至るまで、それぞれが得意分野で兼任し、まさに全員で作ったと言える作品。
片山享(桐木役、脚本、時々監督代理)は、「『1人のダンス』っていうタイトルですが、たくさんの仲間が集まってみんなで作った映画です。ラストカットではカメラマンが号泣するほどでした。」と、現場の一体感を語った。

一方で、安楽監督は演者の立場になると、演出が会話ではなく単語での指示になることもあったそうで、大須みづほ(チヒロ役)は、「安楽監督はいざ演者の立場になると演出が疎かになる(笑)」と明かす一幕も。

安楽監督、RYUICHIと同じく地元小学校時代からの同級生である出倉俊輔(出倉本人役))は、「安楽はわがままで、こだわるので、撮影も長くなります。でも、先輩スタッフの皆さんは、嫌な顔せずに若い僕らに付き合ってくれました。ほんとに良いチームで素敵な仲間ができました。」と、感動と感謝の気持ちを述べた。

1人のダンス
出倉俊輔 OOPARTZ(JUVENILE, RYUICHI)

一発本番の衝撃を持った60分版

今回の60分オリジナル尺版について、森本のぶ(田中 役)は「安楽監督が情熱をかけた、一発本番勝負の衝撃を感じた作品。私もなにかやらなくてはという思いを持った。」と表現した。
安楽監督は「短編版で削ったシーンを今回、皆さんに観てもらって、共感もしていただいて幸せです。みんな来てくれてありがとう!」と感謝の気持ちで初日舞台挨拶を締めくくった。

1人のダンス
森本のぶ

映画『1人のダンス』

公式サイト:https://www.hitorino-dance.com/

-CAST-
安楽涼 ― 安楽
RYUICHI (OOPARTZ) ― リュウイチ
出倉俊輔 - 出倉
佐藤睦  ― ケイ
大須みづほ  ― チヒロ
片山享  ― 桐木
大宮将司  ― AP林
森本のぶ  ― 田中

笠井里美  藤本沙紀  伊藤まさね  朱哩  ボブ鈴木  アフロ後藤
宮寺貴也  アフロ後藤  キャッチャー中澤  葉夏  新野美紀子

脚本:片山享
撮影:深谷祐次
録音:坂元就 木村聡志
挿入歌:tactplanador
メイク:福田純子
編集:安楽涼 片山享
企画協力:直井卓俊

-協力-
ホリプロインターナショナル
アニモプロデュース
オフィス・ルード
ウッドオフィス
Bar Cachette
グリエグラ
フジヤエービック
大塚家
企画ゆのせ商店
藤田義雄
相川結
RIN a.k.a 貫井りらん
SPOTTED PRODUCTIONS
(C)2019 すねかじりSTUDIO

[写真・取材:Ichigen Kaneda、記事構成:Jun Sakurakoji]