おかえり呉線プロジェクト

12月15日、西日本豪雨で不通になっていたJR呉線の三原(広島県三原市)~安浦(呉市)間が復旧した。
呉線全区間で約5カ月ぶりに運転が再開されたこの日、沿線各地で市民らが列車に向かってのぼりや手を振って喜んでいる光景がテレビなどでも報道されたが、実はこれは、呉沿線を想う3人の市民のアイディアからスタートし、呉線沿線の人々の温かい絆が絆を呼び、あっという間に広がっていった「おかえり呉線プロジェクト」が大きな力を発揮していたというのはご存知だろうか?
プロジェクト発足人の高本さんと、バックアップの中心的存在のひとつ呉観光協会の平田さんにプロジェクト実現までの経緯を伺った。

「おかえり呉線プロジェクト」

完成動画

呉線全線復旧から4日後の19日に公開された、ホームビデオ+スマホ3台で撮影されたというこの動画。
15日14時25分、三原駅を出発し、広島駅へと向かう下り列車瀬戸内マリンビューの車内から撮影されたもので、「おかえり呉線プロジェクト」の目標でもあった。

車窓からは各沿線で、大勢の手を振り、旗を振る市民たちが見える。
これらの多くは、「おかえり呉線プロジェクト」の呼びかけで集まった市民たちだ。(本動画は12/24現在、大和ミュージアムのエントランスモニターでも上映されている)

プロジェクト発足のきっかけ

高本さん
プロジェクトは3人でやっていますが、全員が九州の大学出身ということもあり、JR九州さんの「祝☆九州」の存在を知っていました(記事註:東日本大震災の翌日3月12日に放送されるはずだった九州新幹線開通CM。いったん放送自粛されたが、その後、被災地の復興を後押しするものだということで大きな反響を呼んだ)。
西日本豪雨で呉線が不通になったとき、復旧したら「祝☆九州」のようなことがやりたいなと、高本と佐々木とでぼんやり話をしていました。
試しににイメージイラストを描いて、ツイッターとフェイスブックにあげてみたら反応が良くて。
その中でコメントをくれた吉村を一本釣りしてプロジェクトをスタートさせました。

おかえり呉線プロジェクト
企画イメージイラスト

映像完成までの経緯

高本さん
まずはJR西日本さんに車窓の撮影が可能かどうか、こういったイベントを個人で企画して呼びかけても構わないのか確認した上で、11月ごろから本格的に活動を始めました。
多くの賛同してくださる方がいらっしゃったのは、「それだけ沿線の人にとって西日本豪雨災害というものが大きな出来事だった」としか言いようがない気がします。
潜在的なニーズがあったところに、たまたま一番最初に手を挙げたのが私たちだけだったという印象です。
もちろんSNS以外にも各地を直接訪問して、チラシを渡して協力をお願いしたりもしましたが、それはきっかけに過ぎなかったと思います。
また、知人の紹介がきっかけで呉観光協会さんもバックアップしてくださることになったのも大きかったと思います。

突撃依頼!

高本さん
呉線は呉・西条・三原の三駅が管理しているのですが、いきなり電話・訪問してお願いをしました。
自衛隊についてはメンバーの知り合いの自衛隊員に個人的に話を持ち掛けたところ、有志での参加を職員に呼びかけてもらえたそうです。
自衛隊の知り合いがいるというのは、呉ならではかもしれません。
曲を提供くださったMaicaさん(呉市出身)については、私がライブに行ったときに一目惚れならぬ一聴き惚れしたので、直接メールを送ってお願いしたところ、快く受けていただきました。

おかえり呉線プロジェクト
配布されたチラシ

「呉海自カレー全29店舗ののぼりが並ぶと結構すごいんじゃないか。」

呉観光協会も強力バックアップ

呉観光協会の平田さんによると、高本さんのように呉線沿線のために頑張ってくれる女性がいることに強く感銘を受けたという。
さっそく、観光団体関係者(呉を代表するホテルの社長さん)に「おかえり呉線プロジェクト」の話をしたところ、「完成動画を観た全国の人が呉と分かるような“呉海自カレー”のぼりを並べるとかすればいいのでは?呉海自カレー全29店舗ののぼりが並ぶと結構すごいんじゃないか。」というアイディアを出してくれたそう。

社長の助言を受け、平田さんは、呉の飲食を代表する「呉海自カレー」「呉細うどん」「呉肉じゃが」の組合に声をかける。
そして、呉観光には欠かせない「大和ミュージアム」に、また地元各自治会から、地元民、幼稚園児と先生にもその環は広がっていく。

そして12月15日全区間復旧当日、プロジェクトは結実する

実際の参加人数は当日にならないとわからないと各団体からは言われていたが、飲食関係も想像以上の人数が参加。それに、呉市民も加わった。
最初に助言してくれたホテル社長も「おかえり呉線プロジェクト」の横断幕を持って参加。すごい人数が集まったことを驚くと共に喜ばれていたという。

平田さん(呉観光協会)
ホテル社長とその時会わなかったら、その時「おかえり呉線プロジェクト」のことを話さなかったら、呉観光関係者と一緒にこのプロジェクトに参加することもなかっただろうと思うと、不思議な縁を感じると共に、このプロジェクトを立ち上げてくれた高本さんに感謝しています。

おかえり呉線プロジェクト

おかえり呉線プロジェクト

高本さんから、参加してくださったすべての方々へ御礼のコメント

高本さん
こんなにも多くの方に協力いただけると思っていなかったので、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
この動画は、関わってくださったみなさんの宝物になったと思います。
苦労もほとんどなく、呉線沿線の人の温かさを再認識する機会になりました。
今後の展開は今はまだ何も考えていませんが、これは一つの節目に過ぎないので、今後も復旧・復興に何らかの形で関わり続けたいと思っています。

[取材:Jun Sakurakoji]